2008年7月3日木曜日

亀井一成さん

~智恵子は東京に空がないと言ふ~
『智恵子抄』の中の一節だ。

私はYさんに云った。
「北海道には梅雨がない」
「ええ~っ?!本当ですかぁ?!」
Yさんのことだ、知っていたのに驚いてくれた可能性がある。
しかも目をまん丸にしてだ。

Yさんとは夕方偶然に道で会った。
彼女は、神奈川県内で笑顔の美しい女性10本指に入るアラサーだ。
10分ほど立ち話したろうか。
なぜか梅雨の話になった。
そこで出たのが上記の会話だ。

「北海道にはゴキブリがいない」
この話にも驚いてくれた。
最近は、ゴキブリに寒さへの耐性が備わってきたのか、青函トンネルでアクセスが容易になったせいなのか、札幌市内では生息していると聞いたことがある。
ついでに使い古した薀蓄(うんちく)も調子に乗って披露する。
「ゴキブリの語源は“御器被(ごきかぶ)り”でね」
「へぇ、でも梅雨となんの関係があるんすか?」
「あ、いや・・・」

やがて結婚観の話になる。
短時間で次々と話題が移る。
これは私が愉しんでいるしるしだ。
「女性である程度年が行っても結婚しない人がいるけど、そういう人を強い女性だとか、寂しくないですか、と云うのはおかしいかもしれない。案外そういう人は一人でいることが好きなのかもしれない。結婚できないのではなく、一人でいることが心地よいのかもしれないよ」
先週金曜日で34歳になり、いまだ独身を謳歌しているYさんだ。
私の好感度を上げようと狙った発言だったが、Yさんはこう云った。
「ええ~っ!そんなの寂しい!!やっぱり好きな人と結婚して、子供作ることが幸せですよぉ」
玉砕した。

お風呂でその会話を思い出していると、亀井一成(いっせい)さんが思い浮かんだ。
神戸市立王子動物公園の飼育係で、確か日本で初めてチンパンジーの人工飼育に成功され『ゾウさんの遺言』『僕はチンパンジーと話ができる』などの著書がある有名人だ。
昭和54年頃か、高校同級生K橋と二人とも二浪中にもかかわらず王子動物園に行ったら、亀井さんが普通の飼育係の格好でバケツを持って歩いてきて二人とも絶句した記憶がある。
有名人だから、もう少し有名人然としていてくれたら話しかけもできたかもしれないのに、あまりにも普通で虚を衝かれた形で見送っただけだ。
話しかけとけばよかったなぁ、と今もって悔やまれる。

そんな亀井さんの朝日放送の番組の中での伝説のスピーチ。
「なんで動物が芸せなあかんのや。あのねぇ動物に芸させようと思ったらねぇ、ギューと痛くせな動物はゆうこときかんのですよ。そんなことして芸を教えるわけですよ。動物はねぇ、ほんまは生まれたとこで暮らしたかったんです。それが無理やり動物園に連れてきてるんです。人に見せるためにね。僕はなるべく生まれた土地に近い形にして、そこに動物がおるのを見てもらいたいと思ってるんです。それで動物が大きなったら、ちゃんと連れ合いを見つけてね、ほんで子供を儲(もう)けさしてやることが、人間が最低せなあかんことやと思います」
だいたい、こんな内容だったと思う。
当時は、象に曲芸をさせたり、園内を走る汽車に猿を縛り付けて運転士のようにさせたりして、話題作りをする動物園が少なくなかった。
そんな時代での発言だ。

さて、Yさんと動物園に行って亀井さんの話をする妄想でもしながら寝るとしよう。
どこの動物園がいいだろう。
関東では、多摩動物公園か。
いや、ズーラシアに行ったことがないので、ズーラシアにしようか。
・・・行ったことないので、妄想できない。
以前行ったLA ZOOか、HONOLULU ZOOなどは、海外旅行込みなだけに妄想が膨らむな。
いや、しかし、、、

私の財布には金がない。

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