2008年7月18日金曜日

ハートカクテル

心にささくれができるような感覚を久々に味わった。
魅力的な女性と会食をしたあとの、独特の感覚だ。
爽やかな気分のような、後味が悪いような、とにかく日常と違うような、油断するとふと思い出してしまう、気だるい感覚だ。
経験上この感覚は、最低3日は続く。

16日生まれが親睦する“一六会(いちろくかい)”と云う会がある。
今夜はその会合だった。
後輩女子Nさんは8月16日、後輩女子Uさんは7月16日、後輩I君は5月16日、そして私が11月16日生まれだ。
ただ問題は、そんな会の名前を私が勝手につけているだけで、誰もそんな会に組み込まれているという認識がないことだ。
ともあれ第一回“一六会”は、武蔵小山の『釧路食堂』で開催された。
7月5日発売のビッグコミクオリジナルで安くて美味い店と紹介されていたので、早速訪ねてみた次第。
名物のザンギと云われる鳥の唐揚も、ジンギスカンもなかなかの美味で、しかも安かったので満足だ。
とはいえ、特筆すべきは矢張(やは)り、Nさんとの久々の会食だ。

Nさんは“お嫁さんにしたい女性”と云う言い方がぴったりの才色兼備の女性だ。
元祖“お嫁さんにしたい女性”と云えば女優の竹下景子さん。
元運輸大臣の荒船清十郎氏(1907~1980年)が1976年頃のテレビ番組で、司会の竹下景子さんに
「是非うちの息子の嫁に」
と云った言葉が流行語になった。
そういえば、竹下景子もNさんも、トンジョ(東京女子大学)卒だ。

そんなNさんは1980年代の短編漫画不朽の名作『ハートカクテル』から飛び出してきたような、清楚で明るく慎み深い女性だ。
たまに“若さに嫉妬する”という言い方を耳にするが、Nさんに対する感覚は“純粋さに嫉妬する”が近い。
故(ゆえ)にNさんと相対(あいたい)すると気後(きおく)れして、悪く言うとリラックスできない思いがあった。

帰りの電車でのこと。
私の犬の散歩の話から、よく行く海岸の話になり、そこでやっているビーチバレーの話になった。
Nさんも昔、4人制ビーチバレー(って、あるらしい)をやっていたとのことで、中学ではバレーボールをやっていたらしい。
私も中学のときにバレーボールをやっていたこと、その頃はミュンヘンオリンピックで男子バレーが強かったことを話したら、
「猫田を知っていますか?」
と、Nさんは尋ねてきた。
知っているも何も、猫田がセッターをやっていて男子バレーボール黄金期で金メダルを獲ったミュンヘンオリンピックのまさにその時に、私はバレーボール少年だったのだ。
Nさんが生まれる前の出来事だ。
夢中で話した。
猫田の名セッター振りは勿論、エースアタッカー大古のこと、横田が腰痛を堪えるために自転車のチューブを腰に巻きつけて試合に出たこと、“無謀”にも五輪直前に男子バレーチームをテーマにしたアニメ『ミュンヘンへの道』が放映されたこと、東京五輪では女子バレーチームが回転レシーブをやり始めたが、ミュンヘンで男子はフライングレシーブを開発したこと、対ブルガリア戦での奇跡の大逆転のこと、敗者復活の決勝で東ドイツを破って金メダルを獲得したこと。
「じゃ、猫田も活躍したんですね?」
一瞬、猫田に嫉妬したが
「勿論!猫田のトスがなければ、大古や森田や横田のアタックも活きなかった」
と、胸を張った。

あっ。
Nさんと自然に喋っている自分に気づいた。
そうか、自然体でいいのだ。
生(き)のままの、この少年のような純粋な気持ちで喋ればNさんという女性は受け止めてくれるのだ。
ただ、ささくれはあと2、3日は治りそうにない。

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