2008年7月22日火曜日

ヒポクラテスたち

朝の通勤電車でのこと。
戸塚で松葉杖(まつばづえ)の女性が乗ってきた。
一瞬しか見えなかったが年の頃はアラフォーか。
手で掴(つか)む所謂(いわゆる)グリップ部分は滑り止めに包帯が巻きつけてあり、色はまだ白い。
歩き方がぎこちない。
一目見て怪我をしている人だと判った。
ああ、と思っているうちに人影に隠れ、電車が揺れるとチラチラ見える位置にいた。
グリグリと人を掻(か)き分けるほどテンションは高くない。
電車は横浜に着いて大勢が降りる。
その人も動きを見せて降りるかなと思ったが、私の斜め前に立った。
縦のバーを握ることができるポジションで、さっきまでの真ん中よりは安全だと思ったのだろう。
スジから云って、私の隣のおっちゃん(伯父ではない)、つまりその女性の前の人が席を譲るべきだろう。
しかし、眠ったままだ。
こういうこともあるのだから、電車でグースカと寝るのはいかがなものかと思う。
しかも、横浜から川崎、そして品川は、東海道線の中で最も混む区間だ。
左を見ると茶髪のにーちゃん(兄ではない)が、これまたグースカピースカと寝ている。
スジから云ってこのにーちゃんが
「あっ、僕、若造ですから」
と、人を掻き分けて譲るべきだろう。

「義を見てせざるは勇なきなり!」
席を立って
「どーぞ!」
と、堤真一のように譲った。
堤真一になるのも一苦労である。

品川で乗り換え田町で降りて歩いていると後姿の素敵な女性が前を歩いている。
素敵な後ろ姿と云うのはもちろんお尻である。
ええい!
ここでジロジロ見ながら歩いていては堤真一ではない!
と、意を決して追い抜いた。
しかも、振り返らなかって顔を見ることも我慢したのだ。
堤真一になるのも大変である。

高校時代の現代国語教師のH崎氏。
我々があまりにも女の子の話に興じていたのが癪(しゃく)に障(さわ)ったのか、こう云った。
「おまえらなぁ、女の尻を追いかける男より、男に追いかけられるような男になれ」
本質はhypocriteだった(と思う)H崎氏にしては至言であった。

高校の一級先輩のS田氏のごとく、後(のち)に“男の<尻>を追いかける男”が出現したのは、歴史の皮肉としか言いようがないが。

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