外出先から遠回りして道草を食ってオフィスに戻っていたら、近くにはないと思っていたスーパーマーケットを発見した。
うれしくなりすぐ入店。
残念ながらサラダなどの惣菜の品揃えは悪かったが、みかんが安かったので特売の炭焼き珈琲と一緒に買ってオフィスのあるビルに帰った。
エントランスが見えてきたころだが、そのあたりでキラキラ輝いている部分が見えた。
近づいてみると、輝いていたのは妙齢の美人Yさんの笑顔であった。
まるで私とのデートを待ちわびているようにニコニコしながら手を振ってくれた。
玄関で「お帰りなさい」と手を振る美人の若妻と、スーパーで買い物を頼まれてみかんと炭焼き珈琲を買って帰ったハンサムな旦那の構図である。
当然、美人の若妻はハンサムな私を家庭から略奪したということになる。
「お風呂沸いてるわよ」
「おお、そうか」
「ビールも冷えてるよ」
「おお、そうか」
「あなたの好きな鰻も買っておいたわよ」
「おお、そうか」
「半分はそのまま食べて、残りは丼にするわね」
「おお、そうか」
「肝もあるから、山椒を振りかけてね」
「おお、そうか」
「奈良漬もあるからバッチリでしょ」
「おお、そうか」
そんな妄想をしながら近づくと
Yさんは開口一番
「あんまり眠かったから、外の空気吸いに来たんすよぉ」
「おお、そうか」
「なんすかその袋?あれ?聞いちゃまずかったっすか。あっ、みかん、美味しそうじゃないっすか」
「おお、そうか」
「もちろん、私にくれるんですよね」
「おお、そうか」
「えっ、全部くれるんですか、って嘘ですよぉ!」
「おお、そうか」
「あっ、珈琲まである。えっ“6+1袋”の増量パック?じゃひとつは私のじゃないですか」
「おお、そうか」
「なんだ、一箱全部くれるんじゃないんっすか。まぁいいや」
「おお、そうか」
次々と持っていかれるさまは壮観でさえある。
これぞ“略奪愛”である。
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