2008年2月16日土曜日

とうとうみ

昨夜は犬の安眠に貢献する企業に勤めるT氏と会食。

3年ぶりくらいであろうか、武蔵小山の割烹『川よし』へ。
さすが女将さんは私のことは忘れずにいてくれて相変わらず愛想がよい。
時の流れを感じたのは、小上がりが掘りごたつ式になっていたこと。
ありがたい。

ここは鰻の店らしいが、名物はなんといっても河豚(ふぐ)である。
寒い夜とはいえ、まずはキリンラガービール中瓶を頼み乾杯。
ボリュームのあるお通しをアテに喉を湿らせ、すぐに目当てのひれ酒を頼む。
まもなくてっさ(ふぐの刺身のこと)が二人前運ばれてくる。
ここの店の素晴らしいところは、てっさの真ん中にてんこ盛りになっている皮の湯引き。
“みかわ”も“とうとうみ”も、十分堪能できる量なのである。
“みかわ”はふぐの身にくっついていた皮で、“とうとうみ”は外の皮と“みかわ”の間についていた皮で、“みかわ”よりも歯ごたえがある。
個人的には刺身よりも皮が愉しみである。
ちなみに“とうとうみ”は“遠江”と書き、静岡県大井川西部の昔の地名で、三河の国の隣にあった。
“みかわ”にくっついていたので“とうとうみ”となったのである。
私は確かに皮の湯引きが好きであるが、どうもT氏のてっさを食べるスピードが速い。
しかも二枚いっぺんに食べるのは『川よし』ならではの贅沢であるが、彼は時々三枚食べていたような気がする。
しかも早々とひれ酒を飲み干し、ひれの残った器に継ぎ足す継ぎ酒(つぎしゅ)を頼んでいる。

てっさを食べ終わり、定番のから揚げを二人前頼んだ。
幸いなことに一人前づつ皿が分かれて出てきた。
しかしそれで私のから揚げが確保されるとも限らないので目が離せない。

二人とも食べるほうなので、続いてかき揚げと蒲焼を頼む。
ボリュームのあるかき揚げには海老がふんだんに入っていて、アテとしては最高だった。
鰻の蒲焼もタレが辛めで、酒飲みにはたまらない。

けっこうおなかは落ち着き、てっちり(ふぐ鍋)は一人前にしておいた。
T氏はやたらと
「このネギ、甘くて美味しいでぇ」
と言ってネギを勧める。
無視してふぐを食べていると
「なんかふぐばっかり食ってないか」
とイチャモンをつけながら、鍋の中のふぐを探っている。
T氏の継ぎ酒は、私よりも1本多いペースまで行っている。
周回遅れのレーサーの気分だが、都内に住むT氏に合わせていたら大変だ。

最後の雑炊にはおもちがたっぷり入っている。
これも一人前をシェアしても十分な量だ。
T氏がもちで火傷(やけど)するのを願いつつ口に入れたら私が火傷した。
しかし火傷もまたふぐ雑炊の醍醐味のひとつだ。

ふぐは、本場下関や博多では、福とかけて“ふく”と呼ばれる。
3年ぶりのふぐ、文字通り至福の夜であった。

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