2008年2月15日金曜日

ノードストローム

1971年6月19日、大阪毎日ホールであるコンサートが開かれた。
北山修の25歳を祝うコンサートである。
その模様は『北山修・ばあすでい・こんさあと』としてライブレコードとなって発売された。
高校同級生S田から彼の姉のものとされるそのレコードを借りて数十年、所有権は私に移った(ものと信じている)。
昨年、文教堂の中のレコード屋さんで、そのレコードが復刻版としてCDになっているのを見つけて購入した。
これは借りずに購入したのであるから正々堂々私の所有物である。
狭い会場しか借りられず観客に不自由な思いをさせていることに対して、北山修氏が観客に向かって喋っている。
「ほんまにすいませんねぇ。もっと広い会場、借りたかったんですが、ここしかなかったんですよ。6月18日なら空いてますとか、6月20日なら大丈夫ですよとか言われて(笑)。そやけど、この6月19日という日は、6月19日じゃないと意味がないんですよ。ね、だから我慢してくださいねぇ」
当時はアイドルのような北山氏であるから、観客の女の子たちからは
「かまへんよー、サム(北山氏の愛称)」
と、黄色い声で激励されていた。

今朝、ダイアナ妃に時々似ているYさんが紙袋を持って近づいてきた。
紙袋から包丁を出して刺されると思い“栄光に満ちた私の人生もこれまでか”と覚悟を決めたが、Yさんは意外にも
「あのぉこれ・・・」
と言ってチョコレートを呉れたのである。
寛大な私のことであるから、昨日のバレンタインズデイからなぜ一日遅れたかについてはあえて追及しなかった。

10年ほど前であるが、米国の海外出張から戻って姫たちへのお土産や自分へのお土産やガールフレンドへのお土産をこっそりスーツケースから出していたとき、細君が聞いてきた。
「私のはどれかしら」
その瞬間、私は凍りついた。
“しまった、忘れた・・・”
しかし、そんなことを口に出せる筈がない。
頭の中のスーパーコンピューターはフル回転した。
“そうだ、ガールフレンドへのお土産の口紅は確か3本セットだったはず。セットとは言っても確かセロファンで包装されているだけで、ばらせば大丈夫なはず”
「もちろんあるよ。口紅を買ってきた」
と言って1本手渡した。
「ちょっと私には派手じゃない?」
「そうかなぁ、まぁアメリカのデパート、そうノードストロームの店員の趣味なので、日本人より派手かもね」
などと、細君は知らないであろうデパートの名前なぞ駆使して冷や汗を隠しながら事なきを得たことがあった。

Yさんも昨日はチョコの儀式を一通り終えたあと
“しまった・・”
に近い感覚で私を思い出したのかもしれない。
思い出してくれたのならまだいいが、あえて一日ずらしたということも考えられる。
チョコを受け取った私から交際を迫られたとしても
「なに言ってんすか、それは勘違いってもんすよ。だって私が渡したのは14日じゃなくて15日だったでしょ。普通の日にあげたんすから、バレンタインチョコじゃなくて3時のおやつっすよ」
と逃げることができるわけである。
確かにそうである。
バレンタインチョコは2月14日だからバレンタインチョコなのであって、13日や15日のチョコは、カカオから作ったチョコレートであって血中糖度を上昇させるあのチョコレートなのである。

とはいえ、こうしてチョコを呉れたのだから、Yさんは“義理”堅い女性である。
m(ーー)m

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