2008年2月1日金曜日

パンシロンでパンパンパン

30年ほど前であろうか、祖父がテーブルの前で胡坐(あぐら)をかいてテーブルに置いてある胃腸薬「パンシロン」(いまでもあるのだろうか)を見ていた。
何をしているのか私は尋ねた。
祖父は
「腐りかけの饅頭が勿体無いので食べた。腹が痛くなったらシロン(祖父はパンシロンをこう呼んでいた)を飲もうと思ってな」
私は呆れて言葉を失った。

明治の男とはいえ、さすがに幼少の頃より赤貧(せきひん)洗うが如しの生活をしていただけのことはある。
私にとっての凄み体験のひとつである。

今年の正月に帰省したときのこと。
母曰く
「最近は賞味期限がどうのこうのと、うるさ過ぎる。食べ物など少し嗅げば腐っているかどうか分かるし、食べてみて酸っぱかったらやめればいい」
これも戦前生まれの凄みのある言葉である。

饅頭屋で働いた経験もある母は続けた。
「最近内部告発なんてよくあるけど、あんなものは従業員を大事にしてない証拠。よっぽど性質(たち)の悪いのは別にして、食べ物なんてそんなに神経質になる必要はない。私が行ってた饅頭屋だって、余った饅頭の皮を剥いてアンコはまた釜に戻して炊いてた。あんな砂糖を使ったものはそうそう腐らない。従業員を大事にしてたら騒いでいいものかどうか、ちゃんとわきまえるもんや」

昔やっていたように、食べ物をクンクンする癖を復活した。

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