会社のYさんという女性の話である。
映画のようなシーンとは、帰りに見たオフィスの一階にあるコンビニ内で起こった出来事である。
ありがちなことかもしれないが、ふと店内を見るとYさんの後姿が見えた。誰かと話しているようである。
相手は店員で今風の色白の、店がベーカリーを併設しているためか、パン職人のような格好のにーちゃん(“兄”ではない。ヤンキーの“にーちゃん”のような三人称である)である。
最初は、買い物で店員に何かを尋ねているのかと思った。
私は、会社の自転車置き場に行き、鍵付きチェーンを外して、夜なので着脱式のライトを装着して外に出てもう一度コンビニの前に来た。
なんとまだ話している。しかもにーちゃんは楽しそうである。
あらら、いつも昼時は弁当を陳列している棚に肘を掛けて談笑モードである。
これだけ見ればまだ良心的に想像できる。
・いつも行くコンビニのにーちゃんと親しくなったのだろう
・知り合いがたまたまコンビニで働いていたのだろう
・実は親戚のにーちゃんである、等等
話は数ヶ月前に遡(さかのぼ)る。
ある日の夕方、会社で階下へ行くのにいつものように非常階段を使おうとバックヤードへ行った。
そこには荷物専用のエレベーターもあるので配送業者も通る。
と、Yさんがやや顔を紅潮させてこっちに来て、私の横を通り過ぎていくと、配送業者の今風の日焼けしたにーちゃん(“兄”ではない・・)は、いかにもバツの悪そうな顔をして「あっ、、怒っちゃった・・・」とつぶやいている。
これだけ見ればまだ良心的に想像できる。
・いつも来る配送業者のにーちゃんと親しくなったのだろう
・知り合いがたまたま、、、、しつこいのでやめる。。
“点”が“線”で結ばれた。
Yさんの性格はサバサバしているが、誰とでも急接近できる無用心なタイプではない。
「狙った男の子は、私にかかればイチコロよ」というタイプとは対極の、むしろ殿方とは一定の距離を置き慎重に振舞うくらいの人である。
しかし、私が見たふたりのにーちゃんたちは、完全に「落城」していた。骨抜きになっていたと言ってもいい。
それにしても不思議である。
オフィスのバックヤード、地上階にあるコンビニ、普通であればわざわざそんな場所でしかも外部の人間と親しげにするものであろうか。行動学的見地から言って説明は極めて難しい。
そこにひとつの仮説を立てれば氷解する。
つまりYさんのそのときの行動は、普通の人(にーちゃんも含めて)からは見えていないのである。
配送業者のにーちゃんも私が見えていなかったのだ。
そしてコンビニのシーンを見て確信した。あまりに不自然なのである。
店員であるにーちゃんが閉店後のような雰囲気で何分もリラックスして無防備に客と話していた。回りの店員も客もそれに気づいている様子がなかった。まさに映画のワンシーンに見えた所以(ゆえん)である。
私は知っている。
Yさんは天使なのである。しかも悪戯が好きな。
公称3X才だが、きっと1万と3X才に違いない。
にーちゃんたちは、儚(はかな)くも楽しい時間を過ごせたようだ。
今日、Yさんが天使の笑顔で「私のこともブログに書いてくださいよ~」と言ってきた。
私が神の使いであることにまだ気づいていないようである。
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