2008年3月9日日曜日

元少女

ロス疑惑の終章とも言える三浦和義氏のサイパンでの逮捕にマスコミは騒然としている。

沢木耕太郎氏が1986年に書いた日記風エッセイを再録した『246』(スイッチ・パブリッシング刊)に、当時小菅の東京拘置所に収監されていた三浦氏とのやりとりが何箇所か記されている。
雑誌の企画か何かであろうか、沢木氏はスタジオで三浦氏とサド役の女とのSM写真の撮影に立ち会った。
後日、三浦氏は個人的にサド役の女に連絡を取ってきて、自らを肉体的にではなく、心理的にいじめることを懇願したという。
女は応えてやった。
そして女の中に、三浦氏を愛する気持ちが芽生えたという。

ある夜中に女が沢木氏に電話を寄越した。
いろいろ話した後に女は尋ねる。
「・・・・・吐いちゃうかな、あの人」
「吐かないだろ」

そして沢木氏は、こう記している。
ふと、吐かないでほしい、という思いがよぎった。
実際に妻殺しに関与しているにしても、いないにしても。
いや、本当に関与していればいるほど、吐くべきではない。
彼は娘のためにも沈黙を守らなければならないのではないか。
もし、彼が口を割ったら、ひとり残されることになる娘は、「父に殺された母」と「母を殺した父」を、一度に持つことになってしまう。
彼が口を割りさえしなければ、ただ単に「殺された母」を持つ少女に過ぎないのだ。
彼は娘のためにも沈黙を守り通す義務がある・・・・・。

最近の週刊誌の見出しによると三浦氏の娘は27歳になったという。

裁判は、「元少女」を“稀有な少女”にするのか、“単なる少女”にするのか、決めることになるだろう。

どちらにしても27歳になった元少女は、現実を直視しなければならない。

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