電車の車内でふと見上げると不自然な空間があった。
一箇所吊り広告がない。
なくなったのか、元からなかったのかは判らない。
初めて上京したとき、電車に乗って網棚の上にまで広告が貼られていて驚いた。
関西では、大阪や神戸のような都会でも見たことがなかった。
そんな些細なことだが、花のお江戸の購買力に感心したものだ。
アナログ文化の1970年代は、有名人のブロマイドやポスターといった紙媒体が華やかなりしころで、電車の吊り広告にアグネスラムや真行寺君枝などが出ているとよく盗まれたものだ。
今日の車内のあの空間はなぜ生まれたのか想像を巡らせた。
あそこにいたのは誰か。
長沢まさみか、ハセキョーか、小雪か、上村愛子か、オグシオの小椋か、天気予報の市川さんか。
案外かわいいトイプードルだったりして。
「ポスターなんて」
と、思われてしまう、豊かで成熟した世間より、
「おおっ!あれええやん!」
という劣情で、たまに盗まれてしまうことがあるほうが、ある意味健全な気がする。
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