屋形船で花見と洒落(しゃれ)込んだ。
勝どきから船に乗る。
「あっ」
そうか、掘りごたつ式ではないのか。。。
座敷である。
苦手である。
正座がまず辛い。
早速、別に座布団を2枚調達してきて3枚敷いて足を伸ばす。
まるで“笑点”だが、これで足が少し楽になるのだからしょうがない。
宴会が始まり、早速恐怖の瞬間がやってきた。
そう、他の卓からのお酌である。
まだ自分の卓の中でゆるりと注(さ)しつ注されつならよいが、他の卓から
「やぁやぁ、どーもどーも」
なんて調子でやってこられて、お酌されるのはどうにも苦手だ。
まず、そういう輩(やから)は初期はビール片手にやってくる。
乾杯の時にビールを飲んで、もう十分なのにビールを持ってこられては選択肢がない。
暫(しばら)くするとお銚子など持って来る。
自分の杯(さかずき)は持参しないので、そのあたりの適当な杯を使っている。
オー!ノー!と叫びたくなる。
ご返杯とか言って、私の杯を取られたりする。
最悪だ。
隅田川の河川敷は桜が満開だ。
そこかしこに屋形船が停泊している。
キュートなKさんに誘われて屋形船の屋根に上がる。
船から見る夜桜は初めてだが、幽玄な世界が広がる。
肌寒いが、Kさんの純真な瞳と向こうに浮かぶ夜桜の組み合わせは格別だ。
船内に戻る。
矢張り・・・
そう、「民族移動」が始まっていた。
元の席順は殆ど関係なくなっている。
こうなると、もう自分の箸は誰かに陵辱(りょうじょく)されている可能性もある。
もしY君が使っていたらどうなるのか。
ジステンバーでも伝染(うつ)されたら大変だ。
私はそういう病気に抵抗力を発揮する自信がない。
幸い、私の席には大好きなKさんが座っていたので、自分の席に戻る動きを見せて、隣に詰めて座った。
ただこういう幸運はあくまでも例外である。
船内で揚げられた天麩羅が運ばれてくる。
屋根に上がる前に自分でセットしておいた天つゆの器が見当たらない。
岐度(きっと)斜め前のK君が使っている器がそうだろう。
折角(せっかく)多めに大根すりを入れて、おろし生姜も少々入れて万全の体制を敷いていたというのにガッカリである。
穴子の天麩羅が出てきたときに、上から天つゆをかけ、刺身で余っていたワサビを少々乗せて食した。
美味である。
この食べ方ができたのは、K君に天つゆの器を略奪されたせいか。
小さな小さな、悲しいくらい小さな収穫である。
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