2008年1月25日金曜日

宇宙人

Kさんが宇宙人であることを知る人は私以外にはいない。
宇宙人であるから、本来空気は必要なく、だから時々呼吸がうまくいかず眩暈(めまい)がするようである。
地球の重力と折り合いがつかず、肋間神経痛と坐骨神経痛を患っている。
また宇宙人の特徴として、匂いがない。
汗をよくかくと言うわりには汗臭くなく、ニンニクをいっぱい食べたというわりには翌日も全く匂わない。
皮膚の色素も少なめで、時々半透明になるが、普通の地球人は気づかないようである。

Kさんも含めて先日10人くらいで会食に行った。
「Kさんが隣に来ますように」
ひたすら祈ったら、通じるものである。
しかし隣で寝ていたが。
世俗を超越しているところが、また宇宙人の宇宙人たる所以である。

そんなKさんであるが、地球に着てからミスを犯したことがある。
左手の人差し指にある小さな傷は包丁で傷つけたものだ。
地球での生活が長すぎるのかもしれない。
もうすぐ28年だ。

一姫がまだ小さいころ、小学校低学年のころであろうか、一丁前に包丁を使ってみたいという。
細君によると、興味を持ったときにさせておくのがよろしいとのことで、子供用の包丁を買い与えた。
慣れてくるといろいろ困難も出てくる。
大敵は玉葱(たまねぎ)だった。
子供の目の位置は低いので、とにかく目が痛くなるらしい。
それでもカレーか何かで玉葱を切らなければならなくなり、一姫は知恵を絞り当時スイミング教室に行っていたので水泳用ゴーグルを持ち出してきた。
あんなものを付けると視界が悪くなるはずだが、玉葱の攻撃にゴーグルで対抗しようとした。
案の定というか指を切ってしまった。
血は出たが大した傷ではない。
しかしそこは子供であるから大声で泣き始める。
みるみるうちにゴーグルの中に涙が溜まっていった。

「大丈夫?大丈夫?」
と、慰めながらも、ゴーグルの中の「水位」が高まるにつれ、笑いを堪えるのが大変だった。

小さな子供も宇宙人である。

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