2007年12月15日土曜日

靴のかかと

12月14日
昨夜は、赤穂浪士の討ち入り。

旧知の公認会計士Kさんは、生涯の飲み友達。同い年。
以前は月に一回は飲みましょう、と言いながら、“月一会”と称して数ヶ月は実行したものの、互いに忙しく、そうもいかなくなった。
それでも私が
「毎月、飲みたいですね」
と言うと
「いや、毎日飲みたいですよ」
と(^^)

そんなKさんと昨夜は忘年会。
河岸(かし)を決めるときに、メールで
「12月14日は討ち入りですね」
「そうですね、じゃ、(吉良上野介邸のあった)本所松坂町ですか」
「いいですね、探しておきましょう」
「是非お願いします」
「まさか飲み終わった後に泉岳寺まで歩こうなどとは言わないでください」
「言いかねない(笑)」
など、戯(ざ)れ言を交換し、ネット検索(便利になったものだ)。

『わくい亭』は都営浅草線の本所吾妻橋から南下すること500m。
約束の7時に10分ほど早く着いたが、互いに先に着いたら軽く飲(や)っていましょう、とのルールがあるので、そのまま入店。
あれっ?あの後頭部はKさん。煮込みをアテにもうビールをやっている。
「いやぁ時間間違えちゃいまして、6時半からゆっくりと」

初めての店は不安であったが、人気店らしく活気がある。
「いい店を探してくれました。さすがですね」
と、Kさん。
「いや、偶然で。しかし来る途中に“目的”を反芻しましたよ。今日は討ち入りだからこの場所にしたんだと(笑)この界隈は下町らしく風情がありますね」
「そうそう、なんでこんな場所なんだ、って考えて、そうだそうだと思い出しながら来ましたよ」
他愛もないことで互いに大笑い。

大間のマグロ、カワハギの刺身と肝、など贅沢であったが、Kさんの
「忘年会だから♪」
の一言で、罪悪感は雲散。
「ネットによるとここの名物はメンチカツらしいですよ」
と、注文すると、大判のようなメンチカツ。美味。
「洋食で日本酒とは池波正太郎の世界ですねぇ」
とKさん。
「おっ、池波正太郎。ちょうどいま読んでて」
と、時節柄、と読み始めた『おれの足音 大石内蔵助』(文春文庫)を披露。

時刻が過ぎると店主らしき清水健太郎(もちろん似ているだけ)が、東南アジア系のねーちゃんたち(姉ではない)を伴って飲んでいる客の席に行って一緒に飲み始める。
「おいおい、そこの席は客の席だぜ。店主が飲むのは構わんが、客がいるうちは、カウンターの中で飲むのが流儀ではないか」
と心でつぶやく。
店員の無愛想な接客も有名店にありがちなのでまぁしゃあない。テキパキとは、しているので問題ないし。
すると団体客の接客を終えたのか、いままで一階にいなかった女子プロゴルフの小林浩美(似ているだけだが)がテーブル近くで接客し始める。
「あっ、もてなす顔をしている!この女将(おかみ)の存在が大きいのだろうな」
と確信。
その女将、我々のテーブル近くで急にしゃがみこんだ。
「このかかと、お客さんのじゃないですか」
高そうなKさんの靴のかかとが外れて椅子の下に。
「あっそうだそうだ、僕のだ」
と、Kさん。
女将、ビニール袋を持ってきて
「これに入れてください」

Kさんも私も、かかとのことは忘れてしばし歓談。
さわやかな女将に会えて、そろそろ討ち入りに出立せねばならぬ刻限。
あっというまに11時近くになり、酩酊し討ち入りも何もない。
冬の夜風に吹かれながら、今宵の目的を思い出し
「四十七士は、こんなとこから泉岳寺まで歩いたんですね。雪の中ですよ。草鞋(わらじ)みたいなものしかなかったでしょうし」
と私。
「信じられないね」
と、言うKさんも片方の靴にかかとがないわりには、元気に歩いている。
「泉岳寺まで電車で20数分かかるんですよ。遠いですよ」
「昔の人は健脚だったんだよ、きっと」

『剣客商売』もそのうち読んでみるか。

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