蜜柑(みかん)の季節になった。
蜜柑を見ると思い出すことがある。
実家は播州の兼業農家。
農家と言っても、農業を生業(なりわい)にしているわけではなく、先祖伝来の土地で、そこを遊ばせておくわけにもいかぬと、いろいろ作物をやっている程度。地方にはよくある話。
とはいえ、田んぼ、畑、山あり、片手間とはいかない。
そんなことだから、子供の頃から本当に苦労した。
休みの日には農作業に駆り出される。
特に祖父と行くことが多かった。
春には、鍬(くわ)を持って畑を耕し種を蒔(ま)く。
梅雨時になると田植えが始まる。
夏には雑草取り。
秋の米の収穫は鎌での手作業である。
冬には40kgの肥料を肩に担ぎ蜜柑山の上まで運ぶ。
私が食べ物を大切にするのも、こういう原体験によるものかもしれない。
結婚してから、私が帰省するときには細君も一緒に来ることになる。
私が外出して高校の同級生なぞと旧交を温めている頃、細君は私の祖父よりいろいろ聞かされたという。
「あいつ(私のこと)はアカン!いくら山や畑に連れて行っても、遊ぶことしか考えん。虫が飛んでたら、そっちへ走って行ってしまう。小学校の頃からそうで、高校生になっても変わらんかった。それで“嫌なら帰れ!”と言うと、“えっ?ええのん?”と、うれしそうに走って帰ってしまう」
などと、私の不在をよいことに、細君に愚痴をこぼしたという。
祖父にもこまったものである。
きっとボケていたのであろう。。。
ただ細君は私の父からも母からも同じような話を聞かされたという。
こまったものである。
まるで、私がうそつきみたいではないか。。。
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