2008年4月2日水曜日

プラシーボ

久しぶりに自分のデスクに戻ると、書類の山の中にNewsweekの今週号と、、、先週号があった。
こういうのは一寸(ちょっと)悲しい。
こういうときは、今週号にはとりあえず目を向けない。
目を向けた瞬間に先週号は古本になるからだ。

で、帰りの電車で先週の4月2日号を読む。
表紙の見出しは“肥満が犯罪になる日”
そりゃ、近いだろう。
電車やバスの料金は、大人料金や子供料金というふうに、生まれてからの経年で決められているが、畢竟(ひっきょう)なんらかの動力エネルギーで動く乗り物なのだから、体重で差をつけるのが理に適(かな)っている。

本号の中のON SCIENCEというコーナーに“かくもミステリアスな偽薬の世界”とある。
偽薬、すなわちプラシーボについて書いてある。
よくある話では、「この薬はよく効く薬だよ」と“うどん粉”を処方されて飲むとすごく効いたというあれである。
心理学ではプラシーボ効果という言葉もあって、私の生涯の研究テーマのひとつでもある。

近年は、産地偽装が流行したが、あれもプラシーボ効果の一種と思えば、そう腹も立たない。
毒を盛るのはいけないことだが、適当な牛肉を偽装してもたいがいこんなものだろう。
「これ松坂牛ですよ~」
「うひゃぁ、そりゃすごい」
「ねっ、美味しいでしょう?」
「うん、さすが松坂牛!」
これでいいではないか。
売り手も買い手もハッピーである。
そしてばれれば信用を失うのであるから、まぁやるほうもギャンブルみたいなものだし、やられたほうも博打でをスッたみたいなものだ。

スナックでテーブルについた女の子が、どんなにストライクゾーンから外れていても、ママさんから
「この娘(こ)は、この町一番の美人なのよ」
と言われれば、それはもう主観の問題であるから、諦めて自らプラシーボ中毒になるしかない。
そういう「効用」もあるのがプラシーボだ。

しかし好きな女の子に
「私は昔はもてたのだよ」
「私って真田広之に似てると思わないか」
「このレストラン、飲んで食べても一人3000円くらいで、一見居酒屋のように見えるけど、実は高級店でね」
などと、いくらプラシーボ投法を駆使しても通用したことがない。
プラシーボは、また処方が難しいのだ。

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