「市中引き回しの上、磔(はりつけ)獄門に処す!」
時代劇ではお馴染み、奉行が極悪人に沙汰を言い渡す時の決め科白(せりふ)である。
江戸市中を晒(さら)し者にして、江戸庶民に罪人を見せて、磔(はりつけ)にして処刑されるところを公開して、さらに3日間も晒し首にされるという、かなり厳しい刑罰である。
強盗殺人などに適用されていたようだが、秤(はかり)や枡(ます)の偽物を作る“経済犯罪”にも厳しく適用されていたようだ。
明治維新とともに廃止されてそうなものだが、維新後10数年は残っていたようだ。
それにしても、近年凶悪犯罪が頻発するのを見るにつけ、この江戸時代の刑罰はかなり輿論(よろん)や被害者家族に配慮されている気がする。
現在はと言えば、被害者の身上や顔写真は次々と報道されるのに、加害者の人権はかなり保護されて、報道も慎重だ。
また
「加害者も心から反省しており・・・」
など、片腹痛い判決文が朗読されることも多々ある。
犯した罪を反省して、それが判決に影響する意味が、いまだによく分からない。
あくまでも罪を犯した時点の事実のみを挙げて、その重さ軽さを論ずればよいことだ。
最近、来年5月に施行される裁判員制度が随分と広報されている。
世間の反応で多いのはだいたいこの2つだ。
「仕事が忙しいのに、選ばれたらどうしよう」
「凶悪犯罪が中心だというが、判決を下すには重圧がかかる」
当然である。
赤の他人にやらせようとするから、みな尻込みするのである。
被害者の親族で構成すればいいのだ。
何せ被告人は被害者に対して非道な行いをした咎人(とがにん)なのである。
「犯人を許さない」
とは、被害者家族の共通した思いであり、その心情を糊塗(こと)することは理不尽だ。
江戸時代のように仇(かたき)を全国追い回して、切りつけるわけにもいかないのだから、せめてあだ討ちは合法的にやらせるべきである。
人権に一見やかましいような米国でも、1995年に起きたオクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件の例がある。
2001年、犯人が死刑執行される模様が被害者遺族に監視カメラを通じて公開された。
これぞ市中引き回しの後の“磔刑(たっけい)”である。
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