2008年5月1日木曜日

あほかいな

『あほかいな』(日本図書センター)を読了した。
ご存知、昭和の喜劇王であり、借金で勇名を馳せたあの松竹新喜劇のプリンス藤山寛美(ふじやまかんび)の本である。

~なぜ、お客の入りが悪いのか、ということを考えていただきたい。ぼく考えてもらえばわかると思うんです。ぼく思うんですが、結局、その俳優さんたちが、お客さんというものをどういう目で見てるかということになるんじゃないでしょうか。それはみな、お客さんに感謝してることは確かですよ。感謝してると口では言うけど、じゃあ、してるとは一体、どうしてるんかと。じゃあ寛美、君は、お客をどう思ってるのかと問われたら、ぼくは、お客に食わしてもらってると思ってます。ですから、こんなに長い間、食わしていただいたお客に、どうすれば恩返しができるのか~

芸人魂というよりも、そこにマーケティングの原点を見た気がする。

~ぼくの一生は、芝居で始まって、おそらく芝居で終わるでしょう。もし、自分が舞台で、金よりも人情のほうが大事やちゅうてて、私生活で人情より金を大事にしてたら、ぼくは赤軍派より悪い。芝居、ただで見てもろんてんのやのうて、入場料とってますもの。ぼくが人情より金大事にしてたら、それこそサギや。役者はその役そのものやから、それでええやんかと言われるけど、豪壮な邸宅にはいって、義理人情、物より人の情けが大事やと言える?ぼくは言えない人種なんです。言える人種ももちろん、あるでしょう~

京都の伯母の家の近くに『稲垣』という表札の質素な家があった。
寛美の家だ。
お客を笑いの渦に巻き込み、1990年に60歳という若さでこの世を去ってしまった。

3月末に、新宿のルミネ・ザ・よしもとで、お笑いというものを初めて生で見て、大笑いした。
もし寛美の新喜劇を生で見ていたら、内臓がどうなっていたことか。
屹度(きつと)もたなかっただろう。
想像するだけで、恐ろしい。

んな、あほな

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