2008年5月11日日曜日

カミさんの悪口

小説『カミさんの悪口』と云う村松友視氏の名作がある。
『カミさんの悪口』という題で、本を書かねばならなくなった彼(村松氏)自身が、どう書こうかと考えながらストオリイが展開しつつ、なかなか怖くて?書けず、結局最後まで悪口は出なかったと云う、一種の愛妻物語であった。

わが細君も“良妻賢母”からは約200億光年ほど離れているが、なかなかに良い所もある。
いや、あった。
結婚しても大丈夫かなと思ったエピソオドがある。
結婚したのは平成元年なので、それより少し前の話。
当時の企業は一人一人のパソコンなどなく、資料は殆ど手書きだった。
細君の会社の先輩女子が苦労して作ったあるリストを、細君が借りた。
そのあまりの労作振りにコピーするのを憚(はばか)られ、結構な分量を手で書き写したと云う。
写経のごとく。
この一つを以(も)って“この女は信用できる”と思った。
データをパソコンとパソコンの間で、交換や共有できる今の世は、隔世の感だ。

大事な資料を手で書き写す律儀さを持ち合わせた細君であるが、昔の彼女の大事な写真を私の鞄(かばん)から発見すると、姫たちとまるで魔女狩りで無罪の女性を焼き払うように、ヒヒヒと不気味な笑いを浮かべて燃やしたのだった。
「あ゙~っ!」
と、云っても
「未練でもあるわけ?」
と、一瞥(いちべつ)して燃やし続けた。
そして
「ああ、最近の写真でもあれば、たんまり慰謝料取って離婚できるのに」
と、夢見るように思案顔だ。

慰謝料をたんまり払えるほど甲斐性もないが、気分は(天文学的慰謝料を払った)ポール・マッカートニーだ。

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