浪速のモーツァルトことキダ・タローが、朝日放送(大阪)でやっていたラジオ番組『フレッシュ9時半!キダ・タローです』(1973年6月~1989年3月)は面白かった。
その番組の中で、車の三角窓を壊す話が印象に残っている。
昔は殆(ほとん)どどんな車にも、前の席の窓には小さな三角窓が付いていた。
構造上、上下に開閉する窓を作るには、長方形のガラスしか無理だったようで、前方の流線型部分を補うために、内側から手で開閉できる小さな三角窓が付いていた。
キダ氏は密かに狙っていたという。
キーを付けたままロックしてしまうと、JAFなどまだ普及していなかったから、急いでいたら三角窓を割って「被害」を最小にしてドアを開けることがあった。
その窓割りの役割を担うことを密かに待っていたとのこと。
一度、親戚の人がキーを付けたままロックしてしまい、こっそりほくそ笑(え)んだが、少し窓が開いていて、窓を下げることが出来てしまい、キダ氏は、内心悔しがりながらも
「よかったねぇ」
と、言ったとのこと。
そして、やっとこさ
「完全に無理!」
という場面に遭遇したらしい。
車を持つ者は自分の車の窓を割ることは忍びない。
そこにつけこんでキダ氏はその役割を買って出て、嬉々として三角窓を割ったという。
人の生き死に関係ない、ちょっとした人の不幸は愉しい(という説がある。私が云っているわけではない。と、いうことにしておこう。)。
帰宅するときには、品川から通勤快速をよく利用する。
この電車は東京発、小田原行きで、東京を出て新橋と品川に停車すると、大船まで止まらない。
川崎、戸塚、横浜には止まらないので早くて、しかもあまり混まないという、有り難い電車だ。
品川で乗るときに、慌てて乗ってきたり、お喋りに夢中になっていたり、ウォークマンでガンガン音楽を聴きながら乗ってくる輩(やから)が、危ない。
川崎を過ぎて横浜を過ぎるあたりで、だいたい“正体”が分かる。
表情は明らかに
「やっちゃったぁ・・・」
である。
そして大きな溜息をつく。
ある者は、網棚から荷物を降ろす。
電車から降りられるわけでもないのに。
ある者は、携帯のメールを打ち始める。
待ち合わせに遅れることを告げるのだろう。
ある者は、近くの人に大船到着の時刻を尋ねる。
そして途方に暮れる。
洒落(しゃれ)にならないような遅刻はかわいそうだが、通勤快速でこの“図”は、たまに見ることができる。
いやいや、私はキダ・タローのようにずっと密かに狙ってなんかいない。
人の不幸を願うと、いつか必ず自分に返ってくるものだから。
だから、電車で乗り過ごしたことは3回しかない。
ほら、計算が合っている。
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