おとなしく帰宅しようと思っていたら、後輩O君が囁(ささや)きかけてきた。
「ふくべでも、行きますか」
7時頃に『ふくべ』に着く。
さすがに混んでいたが、ほどなく席に案内される。
まずは、樽酒で乾杯。
いつものように、しめ鯖とぬた、そして今日は二人なので、烏賊(いか)焼きも注文する。
原油高の影響で烏賊釣船が漁を数日見合わせたそうだが、なんとか健在だ。
O君はいつものようにぐびぐびと飲み続ける。
私はマイペースで、好きな『梅錦』や『住吉』を燗(かん)で飲(や)る。
焼き物が混んでいるとのことで烏賊焼きがなかなか来ない。
塩らっきょうを、たのんでやり過ごす。
気持ちが良くなったところで、いつものゴールデンコースだ。
『珉珉』へ。
トイレに寄ってからO君に遅れて行くと、心得ていると云わんばかりに、麦酒と餃子2枚、ジンギスカンが発注済みだ。
あとは本能の命ずるまま5品頼んで、二人とも満腹で苦しんだ。
これでは餓鬼である。
閉店時間になり、店を追い出され東京駅に行きO君と別れる。
家で待っているだろうO君の細君は、オードリー・ヘップバーン似の美人だ。
羨ましい。
帰宅する。
二姫から、ケツアタック(お尻を私のお尻にぶつける技)を受ける。
体重が軽いのでそう痛くはない。
一姫が
「だめだなぁ、こうだよ」
と、云って思いっきりケツアタックをしてくる。
「うおっ」
首にまで衝撃が走った。
「分かった?これくらいやらないとパパには効かないんだよ。あー、でも私も痛かった」
3階のトイレに御叱呼をしに行く。
ドアを開けっ放しですると、クレームの嵐が吹き荒れるので、カチャッと締め切らない程度までドアを閉めた。
すると一姫が自分の部屋に行くために3階に上がってきた。
「ちょっとぉ!なんでドアちゃんと閉めないのよぉ」
「えっ?ああ、そうか。閉めてくれたまえ」
「やだよ。自分で閉めればいいでしょ」
「うーん、この階のトイレは広いから、手が届かない」
「そんな言い訳、聞きたくないよ」
「それに、便器から体を浮かせてドアを閉めると、いろんなリスクが伴う」
「もっと聞きたくないし」
「あー、リスクを犯してなんとか閉まった」
「じゃあねぇ」
バタン、と自室に入っていく音が聞こえた。
細君に見咎(みとが)められていたら、
「待って!」
と、頼んでも、電気を消されて真っ暗な中で御叱呼をすることになったかもしれない。
オードリー・ヘップバーンなら決してそんなことはしないだろう。
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