2008年6月23日月曜日

やばい

沖縄での徹底抗戦を終えた日が63年前の今日、とのことで日経コラム「春秋」は結んでいる。
書き出しはこうだ。
~那覇の国際通りには日本中の中高生が集まってくる。修学旅行で沖縄を訪れる本土の若者たちだ。お土産を物色し、アイスクリームを手にそぞろ歩き、じつに屈託がない。~

“物色”という言葉はこのようによく使われる。
三省堂「大辞林 第二版」によると確かに
(1)多くの人や物の中から適当なものを探し出すこと。「店内を―する」
(2)人相書きなどによって人を探すこと。
(3)物の色や形。自然の色や様子。
とある。
しかし私が高校生だった昭和50年頃はあまりこういう使われ方はされなかったように思う。
掏(す)りの上手い高校の先輩Fさんがいて、その友人たちはFさんのことを
「物色、物色」
と、囃(はや)し立てていたので、自宅に帰って辞書を引くと“盗むものをあれこれと探すこと”と書いていて納得した覚えがある。
だから新聞やテレビのニュースでも、“物色中の物音で通報され逮捕”のような使われ方が専(もっぱ)らだった気がする。
ネットで検索すると、確かに今もそういう使われ方が散見されるが、どうも分が悪い。

時代とともに、使われ方が変わってしまったのか。
“こだわり”という言葉が、本来は“固執する”に近い悪い意味であるのに、今では市民権を得たように。
“やばい”が、チンピラの悪事が発覚したときの決まり文句だったのに、若者の感嘆詞になったように。

気になって書斎にある古い辞書を引いてみた。
版は重ねられているが、最終版は1971年12月10日の、岩波の国語辞典だ。
その中でも“物色”の結果は、三省堂と同じだ。

言葉の意味は移ろうものだと書きたかったが、これでは私の脳みそが浮遊している、ということでしかない。

まじ、やばい。

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