先日購入した、桂米朝『THE米朝』の“地獄八景亡者戯”(平成2年4月22日『京都府立文化芸術会館』にて収録)を聴いた。
30年ほど前に初めてラジオで聞いて、面白い噺(はなし)やな、と思っていたので感慨も一入(ひとしお)である。
枕(まくら)で米朝師匠が
「この噺は100年以上続いてる古い噺で」
と、云うだけあって、なかなかに手が込んでいる内容である。
しかも68分と、長い。
戸惑ったのは、アレンジしやすい噺だけに、時事ネタが所々に盛り込まれていることだ。
「あぁ、そういえばそんなこともあったなぁ」
と、思うこともあれば
「あれっ、そんなこともあったような気がするけど忘れたなぁ」
と、記憶が怪しい場合もある。
これは少々辛い。
矢張(やは)りこの手の演目は生で聴くのが一番か。
噺の性質上、三途(さんず)の川が主な舞台だ。
三途の川の渡し舟の船頭は鬼である。
亡者と鬼との掛け合いは特に面白い。
今ならこんな掛け合いもありかも。
「なぁ鬼さんや、あっちの渡し舟はえらい勢いでこの船を抜いていったけど、なんぞ特別の船か?」
「いやいや、特段なんてことはない船や。ただな、あの船の裏っかわにはちょっとした細工が施(ほどこ)してあるんや。見てみ、あの胴体になんて書いてある?」
「えぇ?胴体でっか?はぁ?スピード社?ああ!あの水着の生地を貼り付けてあるんですな。どうりで!」
おあとは、よろしいようで。
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