2008年6月18日水曜日

千代田区千代田1番

ある地方紙の記者、今は東京支社の幹部と話したときのこと。
初対面にも拘(かかわ)らず、幹部氏は悪戯っぽい目で私を見ながら云った。
「私は、日本で一番有名な女性と飲んだことがあるのですよ」

日本一有名な女性?
はた、とこまった。
世界一有名な女性なら、オードリー・ヘップバーンやイングリッド・バーグマンなど、ある程度絞れるが、日本一有名となると、途端に困ってしまう。
夏目雅子か?山口百恵か?轟夕起子か?キャンディーズのミキちゃんか?大田黒久美さんか?瀬戸カトリーヌか?天気予報の市川寛子さんか?黛まどかさんか?オグシオの小椋久美子か?など、候補は枚挙(まいきょ)に遑(いとま)がない。

幹部氏は続けてヒントを出した。
「住まいは、千代田区千代田1番です。もう分かったでしょ?」

私は判らなかった。
幹部氏は、少し焦った。
普通ならここで
「あ!あ~っ!」
と、なるようであった。
が、私は自慢ではないが目配せなどに気づかず、腹芸が通じない。
また異常に勘が鈍い。

結局、幹部氏はかわいそうに自ら答えを云うしかなかった。
「美智子皇后ですよ」
ここで初めて
「あ!あ~っ!」
となった。
なんでも在京の記者の懇談会か何かの縁があり、そこに美智子皇后も来られたとの由。

皇后と云うが、私にとってはいつまでも妃殿下だ。
現在の皇太子は私と同学年なので、いつまでも浩宮様だ。
彼が、バスケット(携帯用の小物入れのような籐籠)を買ったとなると、同級生は一斉に買ったものだ。
彼の母である美智子妃殿下は、本当に美しかった。
戦後最高のスターと云われる所以(ゆえん)である。

『文藝春秋』7月号に特別寄稿として、“皇后美智子さまの告白”なる書き物が載っている。
ここ10年くらいの美智子様の苦労が垣間見える貴重な内容だ。
美智子皇后の講演録をもとに『橋をかける-子供時代の読書の思い出』が編まれたとのこと。
早速、発注した。
著者は、苗字がなく美智子とある。
なるほど、皇室に入ると苗字がなくなるのか、と妙なところで感心。

件(くだん)の幹部氏、一所懸命に当時の様子を話す。
屹度(きつと)彼の“持ちネタ”なのだろう。
「意外かもしれませんが、美智子皇后はけっこうお酒を飲むのですよ」
「あの日は焼酎でした」
「いろいろ苦労も多いみたいです」
「“お酒でも飲まないとやってられません”みたいなことも仰ってました(笑)」

なるほど、ますます親近感が湧くと云うものだ。
いつまでも、健やかで。

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